いとまのはなし。

「忙しない日々に少しのいとまを」大学生です。ゆっくりしてってください。Twitter@itomanomanashi

大人になる。

山の麓の斜面にある墓地の一番高いところに、祖父と曽祖父母の墓がある。斜面の底辺に沿って私道が通っていて、私道を挟んだ反対側はコンクリートの崖になっている。その上には公立高校が建っていて、かすかに学生の笑い声が聞こえてくる。

墓地に眠っているのは祖父と曽祖母だけで、曽祖父は沖縄で防空壕に戦車の砲口を突っ込まれて死んだ。

その隣には父の飼っていた犬が眠っていて、彼は誰かが仕掛けた毒饅頭を食って死んだ。

祖先に感謝しなさい、と寺の住職は言っていたが、祖先、と感じられる人間はこれくらいのものだ。同じ墓地に眠る、大叔父だとかその他諸々のことを僕は知らないし、墓の位置さえおぼえていない。


20歳の冬、僕は歪な形をしていた。

体は、健康そのものだったが、誰とも本音を分かち合える気がしなかったし、かといって「誰とも違う自分らしさ」なんていう標準化の波に飲み込まれることすらできなかった。

ぼくにしか、出来ないことなんて一つもない、こんなことに気づいたのは、つい最近のことだ。